「フン、何がセクスィー殿下だ、笑わせてくれる・・・皇帝陛下とあろうお方がこのようなくだらない遊びに興じているようでは、この世界は終わったも同然だな」

伯爵婦人は相手が殿下でも、あくまで強気だ。
[0回]
「ご婦人、私は遊びでやってはいない。これは私が請け負うべき公務の1つだと思っている」

「はん、どこが遊びではないのだ。奇妙なポーズと踊りで出てきてそれが遊びではないのか。ふざけないでもらいたい」
「ふざけているように見えたのか?」
「ああ、見えるな。どう見てもふざけているぞ。正直がっかりだ、皇帝陛下がそのような恥ずかしくバカな真似をす・・・っ」

伯爵婦人の言葉が止まった。
セクスィー殿下の手が、すっと伯爵婦人の首筋に伸びたのだ。
触れこそはしないが、ゆっくりと撫でるように妖しい手の動きを見せた。
「ご婦人、私がなぜこのような痴態を演じたかおわかりになりませんか?」
「な・・・なんだ、意味でもあるのか」
伯爵婦人は抵抗しているが、セクスィー殿下の色気に押されて、硬直しかかっている。

「もちろん」
「!!」
セクスィー殿下は素早く婦人の肩をとり、くるりと身体を回転させて婦人を仰向けに抱きかかえた。

「貴女には、本当の私を知ってもらいたかったのだ」
「・・・え」
「私は堅苦しいことが嫌いでね。皆・・・誰もが私を皇帝としてしか見ず、距離を置かれることに心苦しさを感じていた。だが、貴女は違う。とても正直なお方だ。その言葉に他の都市の領主にはない魅力を私は感じてしまった」

「お・・・お世辞などいらん。そんな言葉に惑わされる私ではない!陛下はどうかしている!なぜ貶されても平然としておるのだ」
伯爵婦人の言葉にセクスィー殿下は囁くように答えた。
「お世辞ではない。確かに貴方の言葉はきつく棘がある。だが、美しい花ほど棘があると言うではありませんか。だから私は貴女の言葉を聞くと、苦痛どころか幸せに感じるのだ」
「・・・!」
「キャプテン、何が起きてるのかボクさっぱりわからないんですが」
「わからなくていい」

「あー、でも執事のセクスィー殿下を見る目がすっかり変ってるのはわかりますよ。ハートになってますね、いいんですか?キャプテン」
「・・・色気で勝負する気はないから別にいい」
「ですね、セクスィー殿下の色気にキャプテンが適うはずないし」
「決め付けるな(泣)」
セクスィー殿下は、左手に飾られたアクセサリの音をシャラシャラと奏でながら、催眠術でもかけるかのように、伯爵婦人の頭の傍で手を振った。

「なんだこの感じは・・・こんな奇妙な気分は長く感じたことがない・・・うう」
殿下は伯爵婦人の体勢を戻し、立たせた。
「貴女にお聞きしたいことがある」
「・・・なんだ」

「貴女にとってBurdはどのような存在か、話してほしい」
「ブーディはBrumaの都市にとってもガードとしても必要不可欠な存在だ。だから手放すつもりは更々ない」
「違う!」出し抜けに声を張り上げたセクスィー殿下に驚いた伯爵婦人がビクっと体を振るわせた。
「私が聞いているのはそんなことではない!この都市やガードとしてでなはく、貴女自身にとってBurdはどうなのかと聞いているのだ」
「・・・っ、そんなことを聞いてどうなる・・・」
動揺する伯爵婦人。
「ご婦人、Burdはブレードになることを望んでいる。引き止めたければ、本当の気持ちを素直に表すのだ」
「なんだと?なぜブーディ自身がブレードになるのを望まなければならないのだ」
「伯爵婦人、彼のブレード姿を見てわからぬかな?彼にはブレードこそが天職なのだ。貴女はBurdを1人の人間として見ず、ただのガードとしてしか見ていない。それでは彼の能力がまったく活かされていない」
「すると、陛下はもっと違う目でブーディを見ているというのか」
「その通り」
「では聞かせてくれ。陛下にとってブーディはどのような存在なのだ」
セクスィー殿下は伯爵婦人の耳元でボソボソと囁いた。

・・・何を話したのだろうか。
伯爵婦人の表情がみるみるうっとりとした恍惚の面持ちに変った。
「そ、そのような想いで陛下がブーディを見られていたとは・・・なんという幸せ者なのだ、ブーディは・・・もう私では適わない・・・陛下、なんなりとお好きなように・・・あはぁっ」
伯爵婦人は脱力し、へなへなと床に崩れ落ちてしまった。

すっかり戦意喪失した伯爵婦人たちを前に、あの不思議な色気を全身からかもし出しながら、セクスィー殿下は両手を広げ仁王立ちになった。
「キャプテン、なぜ伯爵婦人が倒れたんですか?」
「さあ・・・」

「何を言ったんだろう、あの人。うちの気の強い伯爵婦人を一言で落とすなんて、よほど凄いことを言ったんでしょうね。知りたいなあワクワク」
「私は知りたくない(泣)」
赤い光が消え、通常の謁見の間に戻った。
セクスィー殿下はブレードの二人に振り向いて叫んだ。
「おい、そこの二人ー!」
「はい!」
「Burdを、今すぐ、寺院にお連れして差し上げなさいっ!」

「はい!!」
「さあ、行きましょBurd」

「マ、マジですか!?というか、今何がどうなって説得出来たのか自分まったくわからんかったのですが」
「つべこべ言わずに行くわよー(^^」

「はいはい、わかりましたよ。伯爵婦人、Bruma防衛の時だけは自分戻るつもりですから忘れないで下さいよ!」
Burdの言葉は二人にはもう届いていなかった。
二人の心は、完全にセクスィー殿下の虜になっていたのだ。
「では、私も失礼する。今日は貴女達とお会いできたことを心から感謝しているよ、では」

「あ、あの・・・」
伯爵婦人がフラフラと起き上がり、すがりつくように手を差し伸べた。
「ってぇい!」
「!!」
セクスィー殿下は言葉を噛み締めながら言い放った。
「公務と色恋は一緒になさらぬよう・・・」「な・・・」
「いつの日か、すべてが終わったら、お二人を貴女方に見合う美しい白き都市Imperial Cityにお連れします」
「あはぁっ・・・!」

婦人はセクスィー殿下のトドメの言葉に耐え切れず失神してしまった。
「あれが噂のセクスィー殿下にゃのかー」

壁に隠れてこっそり掃除していたネコミミさんが呟いた。
「おばちゃんたちを色気だけで倒すにゃんて、すっげいおっさんにゃ・・・」

PR