私、素手の格闘スキルがイマイチなのよねー・・・。

素手での格闘は苦手だ。
剣を使った戦闘ばかりなので、なかなか格闘の腕前を上げる機会が無い。
じゃぶじゃぶー>△<

へにょへにょ~
すとれっとぉー>Д<

ぽこ~ん
パンチ力が自分でもへっぽこだってわかるわTT
こっそり自宅で修練重ねてるっていうのに、いつまでたっても格闘は見習いレベルってどういうことよ。
ここは、スケルたん先生の集中指導でスキル上げを手伝ってもらわねば。
先生!登場お願いしまーーっす!

私はいつもの様に召喚呪文を唱え、先生を呼び出した。
[0回]
あれ?

先生が服着てる・・・。
「先生、どうしたんですか?今日は服なんか着ちゃって」
「・・・・・」

様子がおかしい。
どうもこのスケルトンはスケルたん先生ではないようだ。
「えっと、ごめんなさい、貴方スケルたん先生じゃないわね、どちら様なのかしら?」

「・・・・・」
「あのー、うちのスケルたん先生はどうしたのか知りませんか?よく喋るスケルトンチャンピョンなんだけど見覚えは・・・」

「・・・・・」
服を着たスケルトンは何も喋ってくれない。
しかもウンともスンとも言わない。
「おっかしいなあ、スケルたん先生の召喚番号間違えたのかしら」

私は『サモンページ』をペラペラとめくり、番号を探した。
番号が11ケタになってから、憶え難くなっちゃったなあ。
先生の番号を探すが、見つからない。
シーン・・・・
部屋が恐ろしく静かだ。
いつもならスケルたん先生が、昨日見た青春ドラマは骨があって面白かっただとか、公園で若い骨カップルが、骨目も気にせずいちゃいちゃしていたからアタシふんずけてやったわ!とかどうでもいいマシンガントーク付きでスパーリングの相手をしてくれるので、尚更今の部屋の静けさが耳に痛い。
服を着たスケルトンは消える気配がなかった。
召喚派遣のスケルトンなら、時間がくれば消えるはずなのに・・・。
ちょっとネコミミさんにこのスケルトンのことを相談してみよう><

私はスケルトンを置いて部屋を出た。
・・・と思ったら、彼も無言のままついて来た。

無言でついてこられるのはストーカーにつけられているようで怖い。
いつも後ろでうるさいスケルたん先生に慣れすぎたからよけい怖い。
ネコミミさんはどこか買い物にでも出かけたのか、姿が見えなかった。

無口なスケルトンとずっと家にいるのもしんどいので、私は外に出てネコミミさんを探すことにした。
外に出ると、スケルトンも当たり前の様について来た。

「ねえ、付いてくる気なら何か喋ってよ、すごくやりにくいんだけど」
「・・・・・」
相変わらず彼は黙っていた。
「ネコミミさーーーん!>Д<」
私はネコミミを探して、大声で名前を呼びながら、街中を走った。
彼は鈍足だったが、それでもよたよたと後をついて来る。

なんなの、一体。
スケルたん先生もネコミミさんも一体どこにいってしまったのかしら。
「ねえ、何か言ってちょうだいよ!何も言わないんじゃ、こっちもどうしたらいいのかわからなくて困るのよ!」

「・・・・・」
「どこから来たの?どうしてずっと私の後付けてくるの?どうして召喚魔法で現れたのに消えないの><?」
「・・・・・」
やっぱり彼は何も答えなかった。
召喚魔法の調子がおかしくて、スケルたん先生でなく彼を呼び出してしまったのだろうか。

最近あまり使ってなかったから、トラブルが発生したのかもしれない。
魔法のトラブルに関してはメイジギルドに行って相談するのが一番だろう。
私は無口なスケルトンを連れてSkingradのメイジギルドに駆け込んだ。
「これはサモン系のスケルトンではないねえ」

ギルドのおじさんはスケルトンをまじまじと見ながら言った。
「じゃあ、このスケルトンいったいどこから来たんでしょうかTT」
「うーむ、スケルトンが着ている鎧のような服はどこかで見たことがある・・・確か他所のギルドでこんな服を着ていた人らがいたはずだが、どこだったか思い出せないなあ」
「どうしたらいいかわかりませんかTT?」
「彼を説得して元居た場所に帰ってもらうしかないんじゃないかい?」
全然当てにならないアドバイスを受けて、私はメイジギルドの二階を後にした。
どこから来たかわからないのに、話しかけても答えないのに、どうやったら帰ってもらえるのだろうTT

「無視しないで何か答えてくれたっていいじゃない!そんなに私と喋りたくないの!?」
私はイライラしてきて、ついスケルトンに怒鳴りながら愚痴を吐いた。
これからどうしよう・・・。
頭を悩ませつつ重い足取りで、メイジギルドの外へ出た。
「・・・・ッス」
え?

今何か喋った?
「何?もう一回言ってちょうだいな」
「・・・・ッス」
声が小さくて聞き取れないが、確かに彼は何かを言っていた。
「・ッ・・・・ッス・・・!」

彼は声を振り絞り、苦しそうな動作を交えて私に何か言おうとしているように見えた。
花壇がある場所まで連れて来て、もう一度話しかけてみた。

「ねえ、私貴方の言ってること『・・ッス』しか聞き取れないんだけど、もう少しはっきり大きな声で言ってくれないかしら><」
「・・・ッス」
「名前はなんていうの?」
「・・・ッス」
「どこから来たの?」
「・・・ッス」
だめだ。
なんて言ってるのかまったく聞き取れないTT
スケルたん先生なら、同じ骨同士何を言っているかわかるかもしれない。
もう一度『サモンページ』を見て、先生の番号を確認して呼び出してみよう。

「ああ、あった、この番号だわ。090-XXXX-X777・・・」
「今度こそスケルたん先生お願いします><!」

私は召喚番号を確認して魔法を唱えた。
少し離れた場所に、見覚えのある姿が現れた。
近くに寄ると、それは確かにスケルたん先生だった。
「ああ~TTよかった~戻ってこれたワ~!!死ぬかと思ったわよ~・・・ハアハア」

召喚で現れたスケルたん先生はなぜか真っ青になって小刻みに震えていた。
「ど・・・どうしたんですか、スケルたん先生。顔が真っ青だし、いつもの剣も持ってないじゃないですか」
「どうもこうもないわよ~ヘンな陰気臭い場所に飛ばされて、そこにいた変な奴らに因縁付けられてぬっころされそうになってたのよ~恐怖で剣取り出すのも忘れてたわ~」
意味がよくわからないが、うちのスケルたん先生は違う場所に召喚されていて、今、戻って来たらしかった。
「あのう、青い顔してるとこすみませんが、こちらも困ってて、それで先生に助けてもらおうと」

「困ってたって何に~?」
「先生を召喚したら無口なスケルトンが現れちゃって、彼の言ってることの意味はわからないし、帰ってもくれないのでどうしたらいいか困ってたんです><」
「無口なスケルトン?もしかしてムクチ君のことかしら~彼はどこに居るの~?」

先生は剣を取り出して辺りをキョロキョロと見回した。
よかった、先生の知り合いだったら、なんとかなりそうだわ。
「先生、彼はそこに・・・あれ?」

そこにもうあの無口なスケルトンの姿はなかった。
「誰もいないじゃない~」
「あ、あれ?おっかしいなあ、さっきまでここに居たんですよ」
「あ~、アタシと入れ違いで帰ったのかもね~、アタシが戻って来たから彼は強制的にあっちに帰還させられちゃったんだわ~」
「先生、そのムクチ君って一体どういうスケルトンなんですか?」

「彼は闇兄弟ギルド専属派遣スケルトンなのよ~。彼はね~、喋ったことがないの~アタシさえも一度も彼の声聞いたことないぐらい~。だからウチの同僚はムクチって彼を呼んでいるんだけど~過去に酷く辛いことがあったらしくって、それで喋れなくなったらしいわ~」
「え・・・そんなことがあったからあのスケルトン喋らなかったんですか」
「喋らないじゃなくて喋れないのよ~かわいそうなスケルトンなの~過去のトラウマで心を閉ざしちゃってもう喋ることが出来ないから、彼は話さなくても済む場所に派遣されたってわけ~」
「それは悪いことしたわ・・・私、何か喋ってよって何度も怒ってしまったの。謝りたいな」
「仕方ないわ~貴方事情知らなかったんだから~アタシが会うことあんまりないんだけど、会えた時は貴方がそう言ってたって伝えておくわよ~」

「そうですか、お願いします。彼、私に何か言ってたんですが、聞き取れなくって、それで先生に通訳してもらおうと・・・」
「なんですってェ!彼が喋ったの~!?」
「え、ええ『・・・ッス』って、そこしか聞き取れなくて・・・」
「あら~、それは驚くべきことよ~、彼は貴方に心を開いてくれたのかもしれないわね~絶対に自分から何か言おうとはしない骨だったから~あ~、アタシの滞在時間が切れるみたい~何かあったらまた呼んでね~じゃ」
先生は時間切れでポワンと消えてしまった。
あのスケルトンは私に何を言おうとしていたのだろう。

・・・もし再会することがあれば、ちゃんと時間を掛けて話を聞いてあげたいな。
辺りは元の静けさを取り戻し、私は花壇の咲き乱れる花を眺めながら、あの無口なスケルトンは無事に元の場所へ帰れたのだろうかと気になってしまった。
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スケルたん先生はいったいどこへ行っていたのか?
実は
こんな所へ行っていたのです。
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