ドームの中央の部屋は、カボミンたちの団らんの場だった。

何を話しているのかさっぱりわからないが、彼らは思い思いの相手と向かい合って呟きあったり談笑しているようだった。
私が起きてきたことに気が付いた青カボミンが近くへ寄って来て、小さい手で、あちらの部屋へ行くようにと指示してきた。

通路を覗き込むと、奥に部屋があるのがわかった。
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私は青カボミンに言われるがまま、そちらへ進んだ。
そこは食堂だった。

シェフ係なのか、二匹の青カボミンがテーブルの上に並べられた料理の向こう側で立っている。
彼らが用意したのだろうか、この美味しそうな料理の数々を・・・。

私はよだれが垂れてきた。
こんな御馳走をこんな場所で食べられるとは思いもしなかった。
青カボミンたちは早く食えと言いたそうな顔をしていた。
断る理由は何もない、早速頂こう。

彼らが作った料理はこの上なく素晴らしい味だった。
私は夢中になって料理を口に放り込んだ。
食べることで、心の余裕が戻ってきた私は、どうやって彼らがここまで私を連れてきたのか急に気になった。
倒れてしまった後の記憶はまったく無いが、恐らく彼らは私を担いでここまで運んだのではないだろうか。

カボミンは小さいが、力はありそうだ。
数もこれだけいれば私を運ぶことなど簡単だっただろう。
そしてきっとここはカボミンたちの家・・・。
四つの通路と部屋で構成されているドームのようだから、ここは「カボヨン」と呼ぶことにしよう。
満腹になり、私が一息つくまで、青カボミンたちは黙って私が食べるのを見ていた。
美味しい食事をありがとう、君たちのお陰で元気になったよ。

私は青カボミンに丁重に礼を言った。
彼らに言葉が通じたのかわからないが、照れているように見えた。
食事を取って満腹になった私は眠気を催し、再びベッドに戻って一眠りしたのだった。
数時間後、ふっと目が覚めた。
私は宇宙服にセットされている時計を見た。
外はもう真夜中になっている頃だ。
体力はすっかり回復していた。
もしライトメア号が見つからず、誰も救助に来ない最悪の事態が起こったとしても、カボミンたちとこのカボヨンがあればどうにか生き延びることぐらいは出来るかもしれない。
少し外の様子でも見てこようか。
私は部屋を出て、外に繋がる通路へと向かった。
すると、通路の前で一匹のカボミンに通せんぼされてしまった。

彼は外に出てはだめだと言っているように見えた。
別のカボミンも行くなと私に言いたげだ。
夜だから出るなと言っているのだろうか?
私はすぐ戻るからとカボミンにジェスチャーで説明して、通路を開けてもらった。
カボミンは心配そうな様子だったが、私は気にせず、緩やかな上り坂になっている狭い通路を身を屈めながら歩いて行った。

長い通路を上りきったところに木の扉があった。
扉を押し開けて、私は外に出た。
外は夜の闇と静けさに包まれていた。

空気がとても新鮮だった。
私は大きく深呼吸した。
振り返り、目を凝らして湖の方を見ると、遠くに私が最初に見た白い塔らしき影がうっすらと闇の中に見えた。

随分遠い所まで運ばれて来たんだな・・・。
カボミンはなぜ私に外へ出るなと言ったのだろう。
昼と変わらず、夜も静かなものだ。
いや、昼のほうが猛獣がたむろしていて危険なのではないだろうか。
その時だった。
どこからかヒュゥゥッと空気を裂くような音が聞こえた。
私はそれが頭の上から聞こえた気がして、天を見上げた。
・・・大量の火の玉が天から地上に降り注いできた。

恐ろしいことに、それはただの火の玉ではなく、隕石の雨だということに私はすぐ気付いた!
私のすぐ側に隕石の雨は容赦なく降り注いでくる。

危ない!
避難しなくては!!
私は慌ててカボヨンの入口へと走り、間一髪、中へ逃げ込んだ。

カボヨンへ戻り、真っ青な顔で息を吐いていると、カボミンたちはホレ見たことかという顔をして私を見上げていた。

きっと夜になるとさっきのように隕石が降ってきて危険な状態になるのだろう。
だからカボミンは私が外に出ようとしたのを止めたのだ。
カボヨンが水中にあるのは、あの隕石の直撃を逃れる為なのだろうか。
私は部屋に戻り、小さい椅子に座って、ふう、と溜息を付いた。

この星にいつまでもいるわけにはいかない。
第一私には大切な家族がいるのだ。
必ず、必ず、意地でもミスティック星に帰るんだ。
夜が明けたら朝一番でカボミンたちをつれて、ライトメア号を探しにいこう。
そのライトメア号が隕石にやられてなければいいが・・・。
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