どうしようもないほどお腹が空いて今にも倒れそうだった。

林の方には食べ物は見当たらず、私は湖の方に何か落ちていないか、カボミンを連れて丘を下った。
湖の水は美しく澄み渡っていた。
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魚でも泳いでいないだろうか。
水面を凝視していると、すぐ側からパシャパシャと水が飛ぶ音が聞こえた。
私はそちらの方向を見ると、なんと一匹のカボミンが水面にプカプカ浮いて遊んでいた。

私が連れていたカボミンが遊んでいるのかと思ったが、良く見るとそれは今まで見たことがないカボミンだった。
赤いカボミンと違って、こちらはなぜか顔が無い。

顔が無いから、体に水が入らず泳げるのだろうか?
それともカボチャの部分が空洞で、それで水面に浮いているのだろうか。
胴体の部分は青く、どうやら赤色と同じカボミンのようだが、種類はまた別モノらしい。
この種類は青いから青カボミンと呼ぶことにしよう。
青カボミンは私に気が付いたらしい。
プカプカ浮きながら私をじっと見ていた。
ぐぅぅ~きゅ~るるるぅぅぅ~~唐突に大きな音でお腹がなった。
お腹が・・もう限界かもしれない・・・。
青カボミンは私のお腹の音に驚いたのか、水の中にポチャっと沈んでいなくなってしまった。
・・・驚かせてしまったのか、なんだか悪いことをしたな・・・。
その場を離れる気力もなく、ぼんやりと青カボミンがいなくなった水面を見つめていた。
すると、しばらくして青カボミンが戻ってきた。
彼はなんと魚を捕まえて来てくれたのだ。

まさか、私のハラが減ってることをわかって、持ってきてくれたのだろうか。
青カボミンはこれを食べろと言っているようだ。

ああ、これでやっと食料にありつける・・・!
私は前に進んだ。
が、足がふらつき急に視界がぶれてぼやけてきた。

空腹と疲れで、数歩先に進む力ももはや残ってなかったらしい。
目の前に食料があるのに・・・。
もう、だめだ。
私はその場に崩れるようにバタリと倒れてしまった。

私が死んだらカボミンたちはどうするのだろう・・・。
私を食べるのだろうか・・・。
そんなことを薄れ行く意識の中で私は考えていた。
意識は突然戻った。

私はフカフカのベッドの上にうつ伏せで横たわっていた。
・・・砂の上に倒れた気がするが、なぜここに?
不思議なことに倒れた時のままの姿勢で私はベッドで寝ていた。
相変わらず空腹なのは変わらなかったが、眠ったことで体力が少し回復したようだった。

側のテーブルに飲み物らしきビンが置かれていた。
誰が置いてくれたのか解らないが、私は喉の渇きを覚え、それを有り難く頂くことにした。
一口飲んでみた。
・・・美味しい。

私はゴクゴクとそれを飲んだ。
酒かと思ったが、中身は甘い液体だった。
何が原料なのか解らないが、果実の・・・リンゴジュースのような甘い味わいだ。
これでわずかだが空きっ腹が満たされ、私は少し元気を取り戻した。
部屋の中を改めて見回すと、ある奇妙なことに気が付いた。

窓から見える外の景色がなんだか水中のような・・・。
私は窓に近づいて外を見てみた。
目の前には魚が泳ぎ、月面のような水底が広がっていた。
この部屋はやはり水中にあるようだ。

ここはどこなんだ?
なぜ私はこんな所に。
その時、部屋の通路の先から何か聞こえた。
何だかワアワアと賑やかだ。
もしかしてカボミンたちだろうか?

私は低い天井に頭をぶつけないよう頭を下げて、声のする方に向かった。
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