宇宙は広い。

無限の空間に果てしなく広がる星の海をずっと旅しているが、故郷を旅立ってからどれ程の年月がたったことだろう。
[0回]
私は、ミスティック星の科学者兼ライトメア号船長、キャプテン・リアミー。

私が確信を持つ異星間リーネ法則を解明するため愛船のライトメア号と共に星々を巡っていたが、今回ようやく理論証明の目処が付き、故郷のミスティック星への帰路へとつくことになった。
星の同胞達は、仲間は、友は、そして私の家族は元気に過ごしているだろうか。
私が旅立つ時はまだ赤ん坊だった我が子も、見違えるほど成長していることだろう。
リラクゼーションルームで、もうすぐ帰ることが出来る故郷の星への想いに心馳せていると、船内に異変が起きた。
突然警告音が静けさを打ち破ってけたたましく鳴り響き、機械音声のアナウンスが船内に流れたのだ。
ピーピーピー
ケイコク、ケイコク。
エンジンノシュツリョクガテイカシテイマス。
ピーピーピー私は慌てて部屋を飛び出し、エンジンルームへと走った。

おかしい。
どういうことだ?
計器で動力状態を確認してみたが、エンジンには何も問題はない。
ピーピーピー
シュツリョクテイカ・・・シュツリョクテイカ・・・
コウドガサガッテイマス・・・
オートモードキドウシュウセイフカ・・・
ケイコク・・・ケイコク・・・・
耳障りな警告音とメッセージはしつこく鳴り響き止むことがない。
私はコントロールルームに行き、モニターで船内と船外の状況を目視で確認した。

モニターに映った映像を見て私は驚いた。
宇宙空間にいたはずなのに、いつの間にかどこかの星の地上スレスレにこの船が浮かんでいたのだ。

なぜ今まで警告がならなかった?
私はライトメア号のエンジンが正常に出力されているのを確認し、マニュアルモードに切り替え、船体を上昇させようとした。
・・・なんということだ、操縦が効かない!
ピーピーピー
ケイコク・・・ケイコク・・・
セイギョフカ・・・セイギョフカ・・・
タダチニノリクミインハダッシュツシテクダサイ・・・星の重力に逆らえず、更に船は地上へと引き寄せられていく。

この星の文明建築物らしき塔が下方に見える。
もうダメだ。
この船は墜落してしまう。
せめてあの美しい塔を巻き添えにはしたくない・・・。
私は祈りながら目を閉じた。
後はただこの操縦不能になった宇宙船と自分の運命を天に任せるしかなかった。
涼しげな風が顔を撫で、吹き抜けていった。
私は目を開けた。
青い空が視界に入った。

ここは・・・どこだろう。
・・・生きている?

私は動かないで横たわったまま、大きく深呼吸した。
息は普通に出来るようだ。
空気の構成はミスティック星とそう変わらない星なのだろう。
私は身体を起こした。

そうだ、宇宙船は・・・私のライトメア号はどうなったのだろう。
私は重い腰を上げ立ち上がり、後ろに振り向いた。
これは・・・!

背後には真っ黒コゲになった残骸が地面から生えるように散乱していた。
まさかこれがライトメア号!?
いや、違う。
船体がバラバラになったのならこれだけの残骸では済まされない。
それに、爆発に巻き込まれたのなら、私がこうして怪我もなく生きているはずがない。
これはライトメア号ではない。
では一体どこに船は行ってしまったのだろう。
私は遠くに見える白い塔を眺めた。

この星には文明がある。
人もいるはずだ。
助けを求めなくては。
だが、言葉が通じるだろうか?
宇宙服に備えられている自動翻訳機が壊れていなければいいが。
他にも問題はある。
異星人の自分に対して危害を加えてこないだろうか?
武器など何も持っていない。
食料も持っていない。
手元にあるのは航海日誌だけだ。
こんな心細い状態で、もし危険な生物に襲われてしまったら・・・
たった一人知らない星に置き去りにされてしまったことに、私は恐怖感を感じ、その場に立ちすくむしかなかった。
PR