「中で捜してくるから、貴公は外で待っていてくれ。すぐに戻る」

「わかった、じゃあ私は裏に行ってるわ。さっきの装備品の後片付けやっておきたいから」
裏庭に戦利品をほっぽいたままになっているのが、どうしても気になるので早く片付けてしまいたかった。
裏庭に回ると放り出されたガラクタのようにそのまま装備品が残っていた。
「ふぅ、これだけあると拾うの大変ねえ。後で店に持って行って全部売ってこなくっちゃ」

Farwilは自分の周辺が散らかっていても気にならない性格なのだろうか?
[1回]
地面に落ちていた装備品を私は1つ1つ拾い集めていった。
片付けてしばらく待ったが、Farwilはまだ戻ってこない。
何を持っていくつもりなのかしら・・・。
私は様子を見に行きたかったが、後で教えてくれるのなら、そんな野暮なことはしない方がいいだろう。
私は暇を持余し、その辺にあった的で遊ぶことにした。

弓矢は一応所持しているのだが、ダガーで突進してしまうタイプなので、滅多に使わない。
たまにはエルフらしく、弓でも使ってみよう。

ぱしぱしと矢を的に撃ち当てていく。
久しぶりにやると結構楽しいー。
私は夢中になって、矢を撃って遊んだ。
撃つのに飽きて矢を回収している頃、やっとFarwilが戻ってきた。

「待たせたな。久々使うので、どこにあるかすっかり忘れてしまい捜すのに時間がかかってしまったのだ。準備は出来たので早速向かおう」
「使う?アイテムか何かなの?」
「まだ秘密だ。後でのお楽しみにしてくれ。ほら、早くSkingradに連れて行かないか」
はいはい・・・
なんかもうファストトラベルがなかったら、めんどくさい移動に泣かされそうな今回の旅である。
でも、Hassildor伯爵に会えるのなら、こんな突拍子もない旅も大歓迎★城の中に入り、スチュワードに用件を伝えると、Hassildor伯爵を呼んでくれると快く了解してくれた。
私も随分顔が効く様になってきたわね、ウフ
★私はFarwilを連れて階段を上がり、二階の通路で伯爵を待つことにした。

Farwilは辺りをキョロキョロと見回しながら私の後についてくる。
きっとCheydinhal以外の城に来たことで珍しがっているのだろう。
しばらく待つと、伯爵がいつものように奥から現れた。
「なんだ、若い女が来たというから出てきてやったのに、なぜお前がいる。ったく、今度は何の冷やかしかね」

「伯爵、いつも一言多めに現れるの止めてほしいですわっ><そんなこと言ったら、まるで私が若くない女みたいじゃないですの」
「エルフは見た目は若いが歳はアレだろうが。君はもしかしたら私よりも年上ではないのかね?ん?」
「ひどいっ!100歳超えてる伯爵に年上
呼ばわりされるなんてあんまりですわっ!!!
>Д<」さすがにカチンときた私は我を忘れ、思わず伯爵に向かってわめいてしまった。
すると伯爵は珍しく動揺した素振りを見せ、慌てて私をなだめた。
「やめてくれ!でかい声で私の歳を言うな!何も知らない従者達に聞かれたらどうするのだ、少しあせっただろうが。で、何かね、早く用件を言ってくれ」
私は胸を張って伯爵に言った。
「私にも若い子ぐらい誘うことが出来ると証明するために来ましたのよ、この前の伯爵のお言葉は前言撤回させて頂きますわっ」
「証明?ほほう、若者を連れてきたのか」
「ええ、彼がそうです」
「彼?彼がって、どこにいるのかね」
「へ?何を言ってるの伯爵。私の後ろにいるでしょ若い子が」
「若い?どこにだ。お前の後ろにいるのは若いと言うより毛深い・・・」
「毛深い?伯爵、意味がわからないんですけど・・・」
ヘンね。
私の後ろにいるFarwilが見えてないのかしら。
まさか勝手にどこかへ行ってしまったのだろうか。

私は振り向いた。
そこに居たのは・・・
バァアアアァァンンッ!!!
「ヒィィィッ!!!」
私は驚きのあまり仰天して仰け反った。
そこにいたのは狼男だったのである。
アワワワワ(;゚Д゚)
Farwilくんはどこに行ったの!?
腰を抜かしそうになった私の前を狼男はつかつかと横切り、伯爵の前に立ってお辞儀をした。
「Hassildor伯爵お久しぶりです、お元気そうで何より」

「ああ、どこかで見た覚えがある姿だと思えばIndarys伯爵の息子ではないか」
ええっ!それFarwilくんなの?!( ゚Д゚)
てかww伯爵wwwなんで平然と対応してるのよwwww「友人が私をHassildor伯爵に会わせたいと申すので同行して参りました。この衣装で私だとわかってもらえるとはFarwil感慨無量です。伯爵にお会いする時はこれがないと始まりませんからね」
おいおい、何が始まらないんだwwww「君も相変わらずの悪戯小僧だな。会えて嬉しいよ。父上はお元気かね」

「ええ、以前とは比べものにならないほど元気です。母上が亡くなった節では伯爵に多大なご迷惑をお掛けしてしまい本当に申し訳ありませんでした」
「そうか、あの時は君も大変だったのはわかっている。私に対してそう謙遜することはない」
「ちょっと!どういうことよ!!話が全然わからないんですけど!!!!Farwilくん説明しなさいっ」
私は怒りながら二人の間に割って入った。

「まあまあそう怒るな、実は私は伯爵とは顔見知りなのだ。父上がSkingrad城に用事がある時はいつも同行していたから、それで」
「それでじゃなくて、その狼男の格好の意味とどう繋がりがあるのか私は知りたいの!」
Farwilは狼男のまま、きょとんとした。
「吸血鬼の伯爵に会うなら、狼男で会うのが筋ってものだろ?」はい?
意味がわからないんですが???
「あと、王子とフランケンに見合う人物がいれば完璧なんだけどな」ちょwww何が完璧なんだwww
何を狙おうとしているんだ君はwww
「なあ、貴公、誰か知り合いで見合う良い人物はいないか?4人揃えば面白いことに・・・」
「なる訳ないでしょ!!先にそれ脱ぎなさいっ!!それからちゃんとお姉さんに説明してちょうだい!かぶりもの被ったままじゃ声が篭っててなんて言ってるのかわからないでしょ!!」
「わかったよ、脱ぐから怒鳴らないでくれ」
Farwilは狼の着ぐるみを渋々脱ぎ捨てた。

「伯爵と親しいのなら最初から言ってよ><私メチャクチャこっぱずかしいじゃないの!」
「すまぬ・・・貴公をびっくりさせて喜ばそうと思い黙っていたのだ」
Farwilは罰が悪そうにしょんぼりしながら答えた。
「そう怒るな、君は彼のことをよくわかってないようだな。彼はただ者ではないことぐらい承知でここへ連れて来たと思ったのだが」
横から伯爵がFarwilをかばってきた。
「そんなこと知る由ありませんわっ><もうほっといて下さいっ」
私はさすがにいじけて、二人から離れた。
「どうした、今日はずいぶん感情的ではないか」
「しばらく1人にしてくださいな><Farwilくん、ほら、伯爵にお願いがあるんでしょ」
「Farwilが私に?何かね」

「伯爵、この衣装についてご意見を頂きたいと思ったのです。私に似合っているかどうか、伯爵の辛口ファッションチェックをお願いしたい」
伯爵はFarwilの衣装をじっと見つめて口を開いた。
「いいのではないか?全体の色合いが君の雰囲気に合っているし、素材も良いものが使われているようだ。その衣装のまま伯爵の椅子に座っても違和感が無いどころか、Cheydinhalの民すべてが君を賞賛するだろう」
伯爵ー!全然辛口になってなーい!それどころかベタ褒めじゃないのー!><ううっ、辛口になるのはもしかして相手が私の時だけなのかしら;;
「伯爵に褒めてもらえたということは、私のセンスが良いと考えていいのですね!私自身が気に入った服をそのように評価してもらえたことは、とても光栄で有り難き事です」
「ふむ、君は父上に似て礼儀正しく感心だな。どこぞのアフォなストーカーエルフと比べると実に・・・」
「伯爵!><いい加減にしないと伯爵相手といえども私キレますわよっ!!」
私は血管が切れそうになりながら伯爵に喰いかかった。
「まて、そう気を悪くするな、冗談だ。若者を見事連れてきたから、この前の言葉は撤回しよう。つまらぬ事を言って悪かったな、謝らせてくれ」

伯爵はそう言って頭を下げた。
・・・( ゚Д゚)
あ、あれ?
一体どうしたのかしら。
伯爵がこんな温厚な態度で私に接するなんて・・・。
「それで、君は彼を連れてこれから旅を続けるのかね?」
伯爵は穏やかに聞いてきた。
「ええ」
私はそのつもりですと答えようとした時、Farwilが口を挟んだ。
「いえ、この後はCheydinhalに帰らなければならぬので、残念ですが友人との旅もここまでなのです」
えええ~?
「Farwilくん帰っちゃうの?!どーして!!」
「すまない。付いていきたいのだが、父上を一人にして寂しがらせるわけにもいかないし、いばら騎士団のアジトを中心に私は行動したいのだ。でも、貴公が私と遊びたくなったらいつでも相手するから遠慮なく来て貰ってかまわないぞ(^^」
Farwilは満面の笑顔で言った。
ああ~・・・なんてこったい。
また1人になってしまうのか~○<\_
「すると君は再び一人旅になるのだな、可哀想に」
「かわいそうだと思うなら伯爵が付いて来・・・(・∀・)」
「それは出来んと言っているだろうが!いっその事Burd隊長を呼び戻しに行ってきてはどうだね?」
「こないだ帰ったばかりなのにもう連れ戻したら、反感買って間違いなく刺されますわっ!」
「では1人でいたまえ。ところでFarwil、帰る前に時間があれば食事でもしながら話をしたいのだがどうかね。いろいろと積もる話があるのだ」
「私も伯爵とぜひ話がしたいと思っておりました。しかし、友人が・・・」
「私は帰るからいいわ。伯爵とお喋りしてきてちょうだい。あとで家まで来て、Cheydinhalまで送ったげるから」
私はガックリと肩を落とし、その場を立ち去ろうとした。
「待ちなさい」

伯爵が背後から私を呼び止めた。
「今日は無理だが、いつか君と食事出来る機会を作ろう。今日は彼を連れて来て会わせてくれたことに感謝している、またそのうち来てくれたまえ」
思いもかけない伯爵の言葉に私は声が出ないほど呆気に取られた。
振り向いたままポカンとしている私をおいて、二人は奥に去ってしまった。
なぜか知らないけど、伯爵が私に対して友好的になっている・・・?
私は嬉しくなって、笑顔でSkingrad城を後にしたのだった。
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