「貴公、少々宜しいですかな。大事な話があるのだが」
私が寺院の中でウロウロしていると、突然Burdに呼び止められた。
「何よ、急に」
Burdは部屋の隅の方に私を連れて行き、言い難そうに口を開いた。
「・・・急な頼みで申し訳ないのだが、貴公に暇を告げさせてほしい」

「へ?それって、帰るってこと?」
私は思わず聞き返した。
[0回]
「ええ、貴公の元を離れてBrumaガードに戻りたいのです。いや、戻らなければならんのですよ」
「急にどうしてそんなこと・・・」
私は唖然となった。
とうとう私といるのがBurdは嫌になってしまったのだろうか?
「ついてくるのが嫌になったのなら、そうだとはっきり言ってくれればいいじゃない」

「そういう感情的な事じゃありません。貴公、私がどういう立場かわかっておりませんな?これでもBrumaガードの指揮官なんですよ私は。いつまでも指揮官が部隊を留守にして置く訳にはいかんのです」
「時々帰ってるからいいじゃないの。それに帰ったって何もしてないじゃない」
私はつい言い返す。
しかし、Burdは顔をしかめて反論した。
「あのですね、隊での任務等、すべきことはちゃんとやってます。忙しい私を貴公が見たことが無いだけですよ。普段の私からは想像出来んでしょうがね」

それに・・・と、今度は声をひそめて話を続けた。
「私が不在のままだと、伯爵夫人やスチュワードの機嫌を損ねかねんのです。貴公は知らないでしょうが、彼女らを怒らせると貴公などよりも怖いんですぞ」
・・・それはわかる。
特にBrumaの伯爵夫人は私もなんか怖いと思う。
私は引き止めたかったが、Burdの表情を見るととてもそんなことを言い出せる雰囲気ではなかった。

・・・・。
元々、各都市からの応援の邪魔になっていたOBLIVION GATEを閉じるのを手伝ってもらう為に誘ったのに、それが終わってもずっと強制的に同行させてた。
何もずっといなくなるわけじゃないし、もう帰らせても、いっか・・・。
私は決心した。
「わかったわ、残念だけど、ここで解散しましょう」
「・・・有難う。貴公の心遣い、感謝します」
Burdはホッとした表情になり、殿下に挨拶してきますから、と私の側を離れた。
「殿下、私はBrumaガードに戻ることになりましたので、御挨拶を」

「ん?ブレードを辞めてガードに戻るのか、残念だな」
「ええ、ガードに戻りま・・・ち、違います!ブレードになった覚えはありません!自分は本来の持ち場に戻るだけです(汗)」
「そうか、ではまたな」
マーティンは本から目を離さないまま、言葉少なげに手振りでBurdを送った。
「では、私はこれで」

「待って、送っていくわ」
私はBurdと共に外へ出た。
外はいつの間にか日が西に傾き、辺りは赤く染まっていた。

「送るのはここまでで結構ですから。後は1人で帰ります」
門を出たところでBurdは私に言った。

私はどうしても心に引っかかるものがあり、訪ねてみた。
「ねえ、帰る理由って、さっき言ったことだけが理由なの?他にも理由があるんだったら遠慮なく言ってちょうだい」
「そうですな・・・休息を取りたいというのもあります。慣れた場所での寝食がやはり一番ですからな」
「疲れさせたのは、私が無理に連れ回したからね・・・ごめんなさい」
「いや、そんなことは別に責めたりしませんよ。ただ、もう1つ帰ったほうが良いのではないかと思った理由がありましてな」
「なんなの?構わないから言ってちょうだい」
私が訪ねると、Burdは溜息をついて言った。
「・・・貴公に平気で悪態ついてる自分に嫌気がさしたんですよ」
「え?別にそんなの私全然平気だから構わないんだけど」
「そうですか、そう言う割には喧嘩っ早い気もしますが。まあ、長く居た事で隔てが無くなって、軽々しくそんな態度を貴公にとるようになったんでしょうな。だからといって馴れ合うのもどうかと・・・しばらく貴公と距離を置くべきではないか、そう思ったんだ」
「そうなの・・・でも、それって私がBurdを困らせてばかりだから、そういう態度になったんだと思う。服も借り・・・あ、いけない!戻るなら必要になるわね、すぐに家に取りに帰るわ」
私が行こうとすると、Burdが手を上げて制止した。
「いや、いいです。服は貴公が預かってて下さい」
「でも返さないと困るんでしょ?」
「また貴公の元に戻った時に返してもらいますよ。どうしても必要な時は予備を使えば良いし、それに、この鎧も気にならないぐらいすっかり馴染んでしまいましたからな」
「元に戻った時?じゃあ、また同行お願いしても、いいのかな?」
私は俯いたまま、おずおずと尋ねた。

「そんな顔してどうしたんだ?貴公らしく無いですぞ。まるでこれが今生の別れみたいな顔せんで下さい、縁起でもない。私は帰りますが、一段落ついて落ち着いたら、またいつでも同行しますよ」
Burdは慰めるように優しく笑いながら私に言った。
「では、私はもう行きます。貴公、お元気で」
「ええ、貴方もね、それじゃ」

Burdは軽く一礼すると、背を向けて去っていってしまった。
1人残された私は、なんだか無性にむなしくなり、その場に立ち尽くしてしまった。

なぜ、こんなに寂しい気持ちになるんだろう。
きっと私は、Burdに頼りすぎていたのかもしれない。
夜の闇に溶け込み見えなくなっていく街影を、私はぼんやりといつまでも見つめていた。
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