「私がまだ若いころ、私も含め、メイジギルドの見習い仲間たちは禁呪とされていたDaedric魔法に心を奪われる者が多かった。一度Daedraの知識と力を知ってしまうと、誰でも虜になってしまうほどの魅力がDaedric魔法にはあったのだ」

「殿下まで夢中になっていたのなら、相当のものですな。でも危なくありませんか?禁呪とされているならそれなりの理由があるでしょうに」
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「もちろん危険だ。自分の力量も弁えず、力を求めた愚かな者たちの最後がどうなったかは容易に想像できると思う」
「良い結果ではないのは確かですな。しかし殿下なら上手く扱えたのでは」
「そう思うか。恥ずかしい話だが私もその愚かな者たちの1人だったのだ。私は死を免れることは出来たが、友人たちは・・・。その時のことは私の記憶の暗い影として残ってしまった。それきりDaedraに関する術も知識も捨て、私は信仰を変えKvatchの礼拝堂でNineの神に仕える聖職者となったのだ」
「しかし殿下、それだと今、寺院でされてる事は辛いのではありませんか?そのような過去があるなら、思い出してしまいやりきれないかと」

「いや、それがそうでもないのだ。友人たちを失ったのがもうかなり昔のことというのもあるのだが、Daedra関連自体かつて我を忘れるほど好きだった道だからね、寺院で資料を調べていて、当時の探究心が戻ってきたんだ。寝る間も惜しいほど没頭してる」
「で・・・殿下、随分切り替わり方があっさりしておられますな。私は殿下が調べ物に没頭しているのは、皇帝陛下やKvatchの仇を討ちたい一心でなさっていたのかと」
「それももちろんあるさ。ただ、あまりその事を考えすぎると破壊されたKvatchの状景と犠牲になった人々の姿が頭に浮かんできて手につかなくなるのだ。さすがにDaedric魔法をもう一度使いたいとは思わないが、Daedricアーティファクトの美しさやNineの神々にはないDaedraの神々の魅力からは抜け出せそうにもないと痛感している」
「Daedra神の魅力ですと?殿下には申し訳ないが、私には到底理解しがたい道のようです。あれの魅力がわかるような人はおそらく殿下だけかと」
「そうか?もう1人いると思うが」
「え?どこにですか?」
「Daedric装備で身を固めている人物がすぐ近くにいるじゃないか」
「ま、まさかあれですか?いや、あれはDaedraの魅力がわかっているというより、何も考えずただ気に入ってて着ているだけのような気がしますが」
「そんなことはない。例えば・・・そうだな、私がDaedricアーティファクトが必要だと話した時、友はSpell Breakerをくれてね、驚いたよ。アーティファクトの中でもかなりの貴重な品なのだが、惜しげもなく私に渡してくれたのだ」
「殿下、それは価値がわかってないからだと思います」
「価値はわかっていたようだぞ?とても便利なのでずっと持ち歩いていたが、Chorrolの盾の方が自分にあっているからと言っていたな」
「それはただ荷物になっていたので殿下に押し付けただけかと・・・」
「ははは、それでもいいさ。Spell Breakerが貴重な物であることは変わりはない」
「殿下、貴重な話を私などにしてくださって有難うございます。正直・・・殿下に対してこんなことを言うのは厚かましいのですが、親しみやすさを感じましたぞ」
「そうか、嬉しいな。Kvatchのことがあってから、ずっと心が休まる日がなかったが、今の君の言葉のお陰でとても安らいだ気分だ。ありがとう」
マーティンは目の前に広がる広大なCyrodiilの大地に目をやった。

「・・・Burd、ここからKvatchを望むことは出来ないだろうか」
「Kvatchですか?ちょっと遠いですからな・・・見えてもSkingrad辺りまでかと」
「ここからだとあちらの方角にあるはずだが」

「難しいですなあ。うーむ、遠くの方がかすみがかってダメですな。今日はChorrolまでしか見えそうにありません」
そろそろ話終わったかなー。
しばらくして私は二人の所へ戻ってきた。

?
何やってんのかしら。
なんだか妙に雰囲気が和んでいるじゃない。
この様子だと話は上手くいったようね。
なぜか・・・Burdのあの後姿を見ていると、すごぉくスニークアタックしたくなるのよね。
今は殿下がいるからやめとこっと。
「殿下、Burdとはどうでした?」
私はBurdが離れた所へ歩いていくのを見送ってからマーティンに訊ねた。
「ああ、彼と十分会話が出来たことで胸の痞えがとれたのかほっとしたよ」

「それはよかった!ところで・・・Burdが何か聞いてきたと思うんだけど、話しました?」
「彼がからかわれるのが好きだという話だろう?何を君が私に言ったのかしつこく訪ねられたのだが、反応が面白かったのでつい彼を焦らして、そのことは教えなかったのだ」
「あら、じゃあ聞き出せないまま諦めたのかしら。意気地がないわねえ」
「いや、話しているうちに彼が忘れてしまっただけだ。その内また思い出して、慌てて聞いてくるだろう。話すきっかけになっていい」
そう言ってマーティンは楽しそうに微笑んだ。
「そうだ、頼みがあるのだが、君が所持しているダガーを私に少し貸してくれないか?」
「これですか?どうぞ」
私は愛用のDaedric Daggerをマーティンに渡した。
「ありがとう、前からこれをよく観察してみたいと思っていてね」

マーティンはじっとダガーを見つめた。
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