地図で確認しながら、なんとか私は道に戻ることが出来た。
たしか、わき道に逸れる前に歩いていた道はこの辺りだったはずだ。
しばらく待っていると、遠くからBurdが走って戻ってくる姿が見えた。

しかし戻ってきたのはBurdだけで、マーティンの姿がない。
「もう、なんでBurdだけ戻ってくるのよ。まーくんは?」

[0回]
「まーくんとははぐれました!!私を置いて追いかけて行ってしまいましたよ。まったく困ったお方だ。どこまで行ってしまったんだか」
「Burdが変なもの見つけて追いかけるから、殿下までつられて追いかけたんじゃないの!」
私はマーティンのことが心配で、Burdに当たってしまった。

「私のせいにせんで下さい!こんなこと言いたくないですがね、なぜ殿下は御自分の立場を忘れて無謀な行動ばかり起こすんですか!?まったく、あんな勝手な方だとは思っても見ませんでしたよ!」
「殿下に文句があるなら私に言わずに本人に言ったら?一度顔合わせてちゃんと話してみることね。普通は話しかけることなんて滅多に出来ない相手なんだから、この際腹割って話してみなさいよ。殿下はあなたが思ってるよりずっといい人よ」
「貴公は、殿下をなんだと思ってるんだ?普通の人とは違うんだぞ。文句を言ってただですむような相手じゃない」
「Burd、今はその考え捨ててちょうだい。殿下が言ってたでしょ、自分に対して畏まるなって。殿下は滅多なことじゃ怒らないから大丈夫よ」
「大丈夫と言われても・・・私は彼のことはやはり苦手だ」
「なによ、Hassildor伯爵とは腹が立つぐらいめちゃめちゃ喋るのに、殿下とは話せないっていうの?」
「殿下と伯爵を一緒にせんで下さいっ!伯爵はああ見えて結構気さくな方だから私も話しやすいんだ」
「殿下だって気さくだし親しみやすいわよ」
「殿下に対してそんなこと言えるのは貴公だけです。なぜ殿下とやたら親しいのか知りませんが、私はあくまでガードの1人なんだ。殿下とは身分が違いすぎる」
「・・・殿下がそれじゃあ可哀相よ」

「なんですか、急に静かになって」
「後で二人っきりになる機会を作ってあげるから殿下とちゃんと話すこと、いいわね」
「なんですと!?それは勘弁し・・・」
その時、マーティンが戻ってくる姿が見え、Burdは慌てて言葉を飲み込んだ。

よかった。
あまりに長い間戻ってこなかったので、何かあったのではないかと気になっていたのだ。
「殿下、無事に戻ってきてくれて良かった。心配していたのよ」

「すまない、私としたことがつい我を忘れて追うのに夢中になってしまってね」
悪びれる様子も無くマーティンはにこにこしながら答えた。
横からBurdがマーティンに口を出してきた。
「殿下・・・もう少し御自分の立場というものを解っていただけませんか?貴方に何かあったら我々が責任をとれるどころの問題では無くなるのですよ」
「・・・怒ってるのか?」
マーティンはBurdが不機嫌になっているのを察したらしい。
「怒ってません」

「顔が怒ってるが」
「怒ってません、これが地顔です」
どう見てもBurdの顔は怒っていたが、マーティン相手にはやはり本音でぶつかれないのだろう。
しかし、Burdの複雑な心境とは裏腹に、マーティンは物怖じするどころかいっそう笑顔になり、嬉しそうにBurdに謝った。
「申し訳ないBurd隊長。君には迷惑をかけないよう心がけるとしよう。私のことでまた何か気に障ることがあったら、遠慮なく言ってほしい」
あまりにマーティンが嬉しそうに謝るので、Burdは拍子抜けしたのか、怒っていた顔が元の穏やかな表情に戻ってしまった。
ふと私は何かの声が聞こえたような気がして、マーティンが戻ってきた道の先を見た。
「・・・あら?殿下が戻ってきた方から、何か来るわよ」

マーティンが戻って来た方向から黒い生き物が走ってくるのが見えた。
「ああ、あれか。戻ってくる時に目が合ってね。人懐っこい奴で私についてきたんだ。同伴者を勝手に増やして君たちに迷惑をかけるわけにもいかないので、撒いたつもりだったのだが」
それは黒熊だった。
「殿下!そいつはついて来たのではなく、襲ってきたんです!!何のん気なこと言ってんですか!!早く倒さないとっ」
Burdは慌ててマーティンに叫んだ。

熊はあまり強くない種類だったようで、すぐに倒されてしまった。
「殿下、あまり無茶はしないでね。さっきみたいにモンスターが現れても深追いしないで。後はBurdに任せればいいから」
「あのな、殿下を無茶させてるのは貴公でしょうが・・・」

「ああ、心に留めておくよ。ずっと寺院にいたせいか、その反動が出ているらしいな。気をつけることにしよう」
「あ~、君たち?少しは私の話も耳に入れてくれませんかね」
「ところで殿下、折角だから寄り道してDaedraの神像を見にいきませんか?丁度この近くに神像があるのよ」
「は?なに戯言言ってんです。ただでさえ強引に連れ出された殿下が迷惑してるのわからないんですか?それにそんな所に行ったって何が面白いんですか」

「おお、それは是非行って見たいな。異教の神に関することに対しては私は興味が尽きないからね。我が友よ、案内を頼む」
「・・・もう勝手にやってくれ(泣)」
私達は、近くにあるDaedraの神像の場所へ寄り道していくことにした。

かつて若い頃、Daedra教に傾倒していたマーティンは、見たらきっと喜んでくれるんじゃないかしら。
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